不動産投資に興味を持ち、これから購入を検討しようとする方にとって、
最初にぶつかる問題は「どんな物件を選べばいいか」という点でしょう。
迷わず「利回りの高い物件に注目する」という人も少なくありません。
もちろん、不動産投資は安定収益を得るのに向いていますから、利回りも物件選びのポイントの一つです。
しかし、それ以上にチェックしておきたい重要な要素や、物件を絞り込むためのステップがあります。
そこで、どんな順番でどんなポイントをチェックすればいいかを解説しましょう。
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「良い投資用物件はありませんか」と、いきなり聞かれることがよくあります。
「儲かる株の銘柄は?」という感覚に近いかもしれませんね。
しかし、不動産投資の場合は、誰にでも当てはまる「良い物件」はありません。
投資をする人の目的や志向によって、良くも悪くもなるからです。購入能力を知らずにむやみに物件を探しても、無駄足に終わる可能性が高いでしょう。
一般的な会社員の方の場合、年収1,000万円以上なら、自己資金を1〜2割用意できれば
年収の10倍前後の物件は購入できます。たとえば自己資金1,000万円
ローン9,000万円で1億円の1棟マンションを購入するといったイメージです。
その他、ご自身やご家族の資産状況によって、予算を膨らませることはできます。
個別の事情に合わせた資金計画を立てたい場合は、
一度、投資用物件を扱っている不動産会社に相談してみるといいでしょう。
予算を決めたら、エリアを絞り込み、換金性や収益性をチェックします。
いきなり個別物件の収益性を検討するより、購入するエリアを決めてから
物件選びに入ったほうがスムーズに行きやすいと思います。 -
自宅用のマイホームを選ぶ場合、希望のエリアは自分が住んでみたい街だったり、
通勤や通学がしやすいエリアだったりと、自ずと絞られてきます。
不動産投資の場合は、自分が住むわけではないため必ずしもエリアは限定されません。
極端にいえば、どこに投資しても良いのです。
大都市圏より地方都市のほうが相対的に利回りの高い物件が多いため、
収益性を重視して自分とは縁もゆかりもない地方都市を狙う人もいます。身近なエリアのほうが、不動産市況に関係する開発動向、街の変化、
人々の動きなど、さまざまな地域情報もつかみやすくなるからです。
また、たとえ賃貸管理の実務は管理会社に委託するとしても、
何か問題があったときに、自宅や勤務先から短時間で現地に駆けつけて、
自分の目で確認できるような体制を整えておきたいという理由もあります。
実際、成功している投資家の多くは、自分の住む地元を中心に資産を拡大しています。
仮に地元から離れた場所でも、実家が近い、かつて長く住んでいたことがある、など
多少なりとも土地勘があるところが望ましいでしょう。 -
個別物件を選別する際に、重要なポイントになるのは「換金性」、
つまり「売りやすいかどうか」です。
「長期的に安定収益を得ることが目的なので売却は考えていない」と思うかもしれません。
しかし、最初は売る予定がなくても、何らかの理由でまとまった現金が入り用になるなど、
売却しなければならない事情が起きることは十分考えられます。
そのタイミングでスムーズに売れないと、不動産を持っていることが大きなリスクとなります。
逆に多少収益性は低くても、すぐに換金できる株や金融商品のほうが
有利ということになりかねません。“銀行目線”で物件の真の実力を知る
では、換金性の高い物件は、どう見極めれば良いのでしょうか。
物件価格に対する融資限度額の割合を「担保掛け目」といいますが、
それが高いほど換金性も高くなります。そのポイントは自己資金です。
担保掛け目が高いということは、物件価格と融資限度額の差が小さいということです。
たくさん融資を受ければ、購入検討者が用意しなければならない自己資金が少なくなります。
購入検討者は、自己資金の少ない人のほうが数は多いという傾向があります。
したがって、担保掛け目の高い物件のほうが売りやすいということになります。
なお、担保掛け目が同じなら、物件価格が小さいほうが換金性は高くなります。
掛け目が8割とすると、1億円の物件なら必要な自己資金は2,000万円、
2億円の物件なら4,000万円。
必要となる資金が少ない前者のほうが売りやすいといえます。金融機関の評価方法を知る
金融機関の担保掛け目を知るにはどうすればいいのでしょうか。
ある程度まで物件が絞れているなら、直接、銀行に融資の相談に行くのが早道かもしれません。
投資用物件を扱っている不動産会社に問合せるのも一つの方法です。【土地】 路線価(または固定資産税評価額)で判断
・路線価:公示地価の8割が目安
・評価額:公示地価の7割が目安
・公示地価:実勢価格に近いが必ずしも一致しない
【建物】 再調達原価+減価修正
再調達原価:新たに建築した場合の工事費。構造や用途によって異なる。
減価修正:経過年数に応じて減価償却をする。土地と建物それぞれの原価を出して、積み上げていく方法です。
土地については相続税評価の基になる路線価をベースに、
建物については再調達原価を基に割り出しているのが一般的です。・年間収益:賃料収入から年間経費を除いた純利益。
空室率を考慮に入れる場合もある
・期待還元利回り:地域、物件の種類、築年などに応じて決まる。
「キャップレート」ともいう。ただ、あくまでも金融機関評価の基本は「積算法」です。
これらの方法を身につけると、物件価格が適性かどうかを判断できるようになります。
ぜひ勉強してみてください。 -
続いて、物件の収益性に着目します。
収益性を図る指標の代表が利回りです。利回りには、エリアや物件の用途・種類によって一定の法則性があります。
たとえばエリアなら、都心より郊外のほうが利回りは高くなります。
賃貸物件は人口が集まる都心部に近いほどニーズが高くなりますから、
入居率も高く収益も安定します。相対的に利回りが低くても売れるのです。
逆に郊外では人口流入が少なく、賃貸ニーズも低くなります。
そのため、空室リスクが大きくなり、物件価格が下がって利回りが高くなります。
物件の用途では、賃貸住宅よりも店舗や事務所のほうが景気に左右されやすく
空室リスクも大きいため、利回りは高めになっています。
そのほか、築年数が古いほど空室リスクが大きくなり、利回りも高まります。
このようなセオリーを理解した上で利回りを見るようにしましょう。賃料水準や空室率から、本当の収益を知る
収益をチェックする場合、利回りの計算の基になる賃料が適性かどうかにも
注意する必要があります。
投資用物件の検索サイトに出ているのは、周辺家賃や設定家賃をベースに計算した
「満室時の想定利回り」です。
しかし実際には、空室率が高く、収益性が低い物件や、
空室を埋めるためには家賃を見直す必要があるケースもあります。
そこで、賃貸物件情報サイトなどで地域の賃料相場を調べてみましょう。
間取り別、沿線・駅別に出ていますから、同じような条件で相場賃料と比べて、
適性かどうかをチェックします。
次に、現地をよく見ることが大切です。
家賃設定や間取りがマーケットのニーズに合っているのに空室率が高い物件は、
得てして管理がずさんだったりします。
賃貸管理会社がきちんと物件広告も出さず、
積極的な入居者募集活動をしていないケースも少なくありません。また、投資家自身がいくらローンを組むかによってローンの支払い額は変わります。
物件の利回りだけでなく、収支計算をした上で手残りがあるかどうか、
キャッシュフローがきちんと回っているかどうかをチェックすることも大切です。東京都心部では5〜6%、都心周辺23区内では6〜7%、
東京都下・川崎・横浜で8〜9%、千葉・埼玉や大阪は9〜10%と
いったバランス(時期、市況によって変動)。居住用より店舗・事務所の方が利回りは高い。
築年数が古いほど利回りが高い。
返済期間の短いローンしか組めない。